普段、アメリカで暮らしながらエンジニアをやっている我々夫婦ですが、自分たちのまわりで「今度、結婚するんです!」という話を最近良く聞くようになりました。
結婚や入籍は人生の一大イベント!どうせなら普通と違うちょっと変な「結婚」や「入籍」を体験してみたいというハッカー根性をお持ちの方も、特にエンジニアの方の中にはいるのではないでしょうか?
今回は私達がやった「日本人同士だけどアメリカの方式で結婚し、日本に外国方式の結婚として婚姻届を提出」というレアな体験から、具体的にアメリカ・サンフランシスコ(と日本で同時に)で結婚する方法と、ちょっと楽しいアメリカでの結婚式体験をご紹介します。
この記事は【その2】妻・夫を愛してるITエンジニア Advent Calendar 2016の19日目のエントリーです。のろけ話が基本のアドベントカレンダーですが、今日のエントリーでは妻への愛がゆえに、3年前に慣れない英語で必死に頑張った「アメリカでの結婚手続き」について綴ろうと思います。近く結婚されるエンジニアの友人たちの役に立てば幸いです。
実は観光客同士でもアメリカで合法的に結婚できる
まず、アメリカでの結婚についてですが、実はアメリカで合法的に結婚(リーガル・ウエディングといいます)するには米国籍や永住権はおろか、就労ビザや住所ですら必要ありません。つまり誰でもステータス関係なく合法的に、自由に結婚できるというということなので、日本人同士の観光客カップルがアメリカで結婚することもできます。さらに言えば、結婚のレギュ―レーションは州ごとに決まっており、カリフォルニア州では同性婚もOKなので、国籍や居住はおろか性別すら自由です。
アメリカで結婚するメリットは「便利」「楽しい」
「日本居住なのにアメリカで結婚して何のメリットがあるの?」と言われる事があります。たしかに海外居住でないとメリットが薄い場合もありますが、なにより「便利」「色々楽しい」というのが率直な感想です。
まず「便利」という点。これは主に米国居住者やビザ申請者に有利な点ですが、マリッジ・サーティフィケート(Marriage Certificate)というアメリカの結婚証明書は、アメリカ国内ではリーガルで厳正なものなので、さまざま行政手続に実際に使うことができます。ビザの申請をはじめとした行政手続きを行う際、通常は配偶者を証明するために日本の婚姻届と英訳を提出する必要がありますが、マリッジ・サーティフィケートを提出すればそもそも英語なので、翻訳などは必要ありませんし、「SYOWA is …. Oh, HEISEI means …」みたいな無駄なやり取りをしなくても大丈夫なので大変便利です。
次に「色々楽しい」という点。これは楽しさの感性にもよりますが、サンフランシスコの場合、市役所がめちゃくちゃ歴史のある綺麗な建物なので、普通に役所に書類を提出しに行っただけなのに、なんだかものすごくテンションがあがります。
さらに、自分たちでタキシードとウエディングドレスを用意して手続きにいけば、日本のそこらの結婚式場より何倍も素敵なウエディングフォトを会場費無料で撮れたりします。この写真、私達の実際の結婚式の写真ですが、単なる市役所の階段ですからね(笑)
友人を連れていけばもはや完璧に結婚式ですね。(本当に結婚式なのですが、日本でいう結婚式的な感じ)
※ 市役所の窓に座り込む人々
※ 市役所に一緒に書類申請にきてくれた友人たち
また、もう一つの面白さとしてアメリカの婚姻状態を日本の戸籍に紐付けることができるのです。これはどういうことかというと、アメリカで結婚した後に、アメリカの結婚証明書を持って日本大使館や日本の区役所に婚姻届を提出すると、外国の方式で結婚していることを根拠に、日本で新しく戸籍を作ることができるのです。この場合、結婚した日は婚姻届を提出した日ではなく、海外の現地で結婚式を揚げた日の現地時間が日本での婚姻の日として扱われ、記録されます。また、この場合は証人が不要で、証人欄は空白でも婚姻届が受理されます。
さらに、外国方式で結婚した場合は戸籍謄本にその旨が記載されます。私達の場合は【婚姻の方法】アメリカ合衆国カリフォルニア州の方法という項目が追記され、【婚姻日】と【証書提出日】&【編成日】は違うという面白い状況です。ちなみに結婚記念日はアメリカで式を挙げた3月5日(巫女の日)です。
私たち夫婦はシリコンバレーに思い入れがあるので、日本の戸籍謄本にカリフォルニアの名前を載せれた事はちょっとした幸せです。
また、行政書類に謎の項目を増やすのって、ハックしてる感じでなんだか楽しいです(笑)
こうやって婚姻届のDependencyが定義されてると、最愛の人と夫婦であるという根拠が冗長構成されているような感じで、エンジニアとしてはなんだかとても安心しますし、より強く相手を幸せにしたいなと感じます。
具体的な結婚手続きは?
こんな感じで楽しい米国での結婚ですが、結婚の手続きは日本と違い、区役所に紙ペラを出せばそれで終わり、というわけには行きません。州によって内容や難易度の違いはありますがマリッジ・ライセンス(Marriage License)とよばれる「あなたは結婚していいですよ」と言う資格を取得し、婚姻コミッショナーとよばれる資格を持った人の立ち会いのもとでマリッジ・サーティフィケート(Marriage Certificate)と呼ばれる日本の婚姻届的なものに署名して書類を役所に提出することで、晴れてリーガルな夫婦となることができます。
この手続きには事前に用意するものや、窓口の予約、いくらかの手数料が必要ですので、必要な作業を時系列にまとめていこうと思います。以後は基本的にカリフォルニア州の法律に準じた内容で、サンフランシスコ市庁舎での結婚を前提に話をすすめます。
1. アメリカでの結婚の種類
アメリカには2種類の結婚があります。1つはPublic Marriage, もうひとつはConfidential Marriageです。
Public Marriageはその名の通り、結婚状態が公衆に公開される結婚です。結婚すると官報とかにも乗るらしいです。正式な理由と手続きをすれば、他人が情報を開示することもできます。日本で一般的に結婚式といえばPublic Marriageです。Public Marriageの申請には証人が必要です。
Confidential Marriageは、結婚状態が公衆に非公開な状態の結婚です。当人と行政以外は、誰も結婚している事を知りませんし、知ることもできません。でも、もちろんリーガルなものなので重婚はできません。結婚詐欺には使えないので安心(?)してください。Confidential Marriageの場合は証人が不要です。
2. 必要な期間
なんだかんだ事前の準備が必要なので、1泊程度の滞在ではサンフランシスコで結婚式を挙げるのは大変です。少なくとも事前に予約などの準備を全て済ませた上で、日本からの場合は4日から1週間程度の滞在旅程で考えておくと良いのではないでしょうか。
幸いサンフランシスコ周辺には有名なテック企業やワインのおいしいナパバレーがありますから、エンジニアの方であれば良い刺激になって楽しめると思います。ぜひ新婚旅行がてら、シリコンバレーを堪能してください。
手続きは基本1−3日で終わりますが、手続きや結婚式を行う市役所窓口の事前予約は必須です。飛び込みではできませんので注意してください。
そして混んでいる時は1ヶ月程度予約の空きがない状態が基本ですので、少なくとも1ヶ月以上前から結婚の準備や予約手続きを初めてください。
3. 必要なもの
結婚の手続きには以下のものが必要です。
- パスポートなどのフォト付きの性別、名前、顔が判別できる政府発行の公的証明書
- 料金を支払うための現金。カードはVisa/Masterのデビットカードのみ使えるので、日本で発行されたVisa/Masterのクレジットカードでは決済できないので注意してください。
基本これだけあれば大丈夫です。
4. まずはマリッジ・ライセンスを取得
結婚式に先立ち、まずはマリッジ・ライセンスという「結婚しても良いよ!」という公的資格をゲットします。というのも、アメリカは統一戸籍が無いので、重婚などを防止するために結婚式に先立ちライセンスを取得する必要があるのです。(別に試験はありませんので安心してください!)
場所はサンフランシスコのシティーホールです。
窓口はSuite 168、申請料金は2016年12月現在で$108.00-です。
料金の詳細はFees – Marriage & Domestic Partnershipを参考にしてください。
窓口は8:30amから3:30pmまで開いています。閉まるのが早いので注意が必要です。飛び込みでも大丈夫な事もあるようですが、基本的には事前にオンラインで予約をしておく事を強くおすすめします。むしろ予約必須くらいで考えてください。
予約はOnline Reservationのページから行うことができます。予約時間の10分前には窓口に来るようにしてください。手続きは30分程度です。
申請書は事前にPDFでオンラインで落とせます。当日焦らないためにも、事前に印刷し、署名したものを持っていくようにしましょう。
申請書はForms – Marriage Licenseからどうぞ。
窓口には必ず2人で行かなければいけません。無事ライセンスが発行されると、そのライセンスは90日間有効です。
5. 別姓にするかどうか決める
マリッジ・ライセンスの申請時、実は結婚後の名字を相手のものに変えるか、変えないか選べます。つまり、夫婦別姓でアメリカで結婚することも可能です。
ただ、日本でアメリカでの結婚を根拠に入籍した場合であっても、日本の戸籍法は夫婦別姓を認めていないので、日本では公的にはどちらかの名字を名乗る必要があります。あくまでアメリカだけの話なので注意してください。
我が家の場合、面白そうなのでアメリカでは別姓で結婚しています。つまりKyosuke InoueとTakako Ohshimaで夫婦です。
なぜ別姓にしたかというと、夫婦ともに結婚前から対外的に実名で活動しており、免許書やクレジットカード、銀行口座、SSNも日米それぞれ旧姓で発行しているので変更するのが大変だったという事情もあります。そしてお互いにはハンドルネームで呼び合う夫婦なので、生活上の実害はなにもないのです。
とはいえ、一番の理由は何なの?と言えば、はとねさんが「面白そうだから!」と選んだというのが正直なところです(笑)
ちなみに、はとねさんは私の名字が嫌いなわけではなく、日本では好んでよく使ってくれています♡
変えるにしても、変えないにしても、男が変えても、女が変えても、なにかと手続きは発生します。ご自身の判断で良いなと思う選択をしてください。
6. 衣装、花、フォトグラファーなどを手配し、友人に声をかける。(オプション)
結婚だけが目的であればこの項目は不要ですが、せっかく素敵な場所で結婚式を挙げるのですから、衣装やお花を用意し、プロのフォトグラファーに写真を撮ってもらいましょう。
衣装は日本で本格的な式を挙げる予定があったり、特にこだわりが無いのであれば、撮影用のコスプレだと割り切って楽天やAmazonなどで買ったドレスやタキシードを地元のお店で直してもらうのも1つの手だと思っています。(私たちはそうしました)
1万円くらい出せば、安っぽいコスプレじゃないウエディングドレスも結構あります。
タキシードも売ってます。パーティー用じゃない物を買うのが良いと思います。
これなら旅先で汚れても悲しくないですし、自分のものであれば雑に扱っても怒られないので、気が楽ですよ!
お花は生物なので、現地調達をしましょう。Yelpなどでフラワーショップを探し、結婚式のためにブーケやブートニア(男性が胸につけるやつ)がほしいといえば丁寧に対応してくれると思います。50-80ドルほどあれば、立派なブーケを作ってくれるでしょう。
お花は当日ピックアップする時間を決めておいてください。営業時間にはくれぐれもご注意を。
フォトグラファーはやはりプロの人にお願いすると幸福度が全然違いますので、絶対おすすめです!私達の写真は、サンフランシスコでフリーのカメラマンをやっているSlusser PhotographyのNoriko Shiota Slusserさんにお願いして撮影していただきました。
撮影される人物の表情が本当に豊かで、シティーホールでの撮影も全てのロケーションを知り尽くしている方です。個人でお願いしているので、普通のウエディング・フォトだと撮影しにくいようなネタな写真もどんどん日本語でお願いできます。
私がベイエリアで最も信頼するフォトグラファーさんで、周りの人にオススメしています。もしシティーホールで結婚式を行われる場合は、ぜひ連絡してあげてください!
ゲストは通常、4人まで随行できます。もし同席できそうな人がいたら、早めに声をかけておきましょう。ちなみに市役所なので、平日しか開いてませんのでご注意を!
7. 結婚式をあげる
いよいよ結婚式です!パスポート・財布・前もって取得したマリッジ・ライセンスを持って、衣装を着込み、花を受け取って、Uberで市役所に向いましょう。 友人やカメラマンさんとは30分程度前には集合できるように調整してください。結婚式は予約のみ受け付けており、飛び入りはできません。
必ずMarriage: Civil Ceremonyのページを読んで、予約や当日の準備を行ってください。シティーホールで結婚式を行う場合の料金は$81です。
時間は9:30amから3:30pmまで30分刻みで行われます。
また、Public Marriageの場合は証人が必要です。通常2名(最低でも1名)の証人の署名が必要です。
この際、証人になってもらう人にも写真付きの身分証明書を持ってきてもらうようにしましょう。2人だけでいくのではなく、必ず誰か友人を連れて行くのがオススメです。
もし誰もいない場合は、市庁舎内でそこらへんにいる人や他のカップルに証人をお願いすることもできますが、できるだけ証人は連れて行ったほうが無難かなと思います。
セレモニーは、場所があいていれば市庁舎の好きなところで行うことができます。私達は階段の上で行いました。とても素敵でした。
基本的に指輪交換もキスの要求もありません(行政手続なので!)ですが、アメリカ人は基本的にノリがいいので、コミッショナーにお願いしたら牧師役をやってくれることもあります。無理強いをしない範囲で、セレモニーを楽しんでください。
セレモニーが終われば、あとは残った時間でウエディングフォトを撮ったりして楽しみましょう!これで晴れてアメリカで夫婦となることができました。めでたしめでたし!
8. 結婚証明書の公的複製を取得
結婚式が終わっても、まだ日本では夫婦ではありません。このアメリカでの結婚を根拠に日本の戸籍を作るため、アメリカの結婚証明書の公的複製(License and certificate of marriage)を発行しておらう必要があります。結婚式のときに発行されるMariage Certificateだけでは足りません。
詳しくはHow to Obtain Copies of Marriage Licensesをご覧いただきたいのですが、基本的には結婚式の後、2-3営業日後にシティーホールのCounty Clerkの窓口に行って申請すれば発行されます。料金は$21です。
そしてこのLicense and certificate of marriageは必ず2通必要です。合計$42とお値段がかかりますが、日本での戸籍の編成に必要なので必ず2通以上は取得しておきましょう。(なかなか行ける場所でもないですから)
詳しい必要書類に関しては日本大使館のページを参考にしてください。
9. 大使館、もしくは日本帰国後に役所に婚姻届を提出
いよいよ最終ステップです!大使館もしくは日本国内の役所に婚姻届を提出しましょう!
婚姻届と夫、妻の戸籍謄本(全部事項証明書)、サンフランシスコ市庁舎で取得したCertificate of marriageに、Certificate of marriageの翻訳をつけて役所に提出します。
翻訳は自分で行って構いません。箇条書きに内容を翻訳し、最後に自分の名前とサイン、日付、印鑑などを押しておけば大丈夫です。
各書類の必要枚数は大使館経由か日本国内での申請かによって違うので、大使館のページを見ながら確認してください。
(大使館経由の場合は基本2倍の枚数が必要です)
10. 日本で夫婦に!!!
おめでとうございます!
これで晴れて、日本とアメリカでレプリケーションを貼った状態で夫婦になることに成功しました!
なかなか出来ないレアな体験を一緒に乗り越えた二人は、きっと末永く幸せに結婚手続きのネタ話を共有し続けられることでしょう。
どうぞ末永くお幸せに!!!
エンジニアならではの、ちょっと変わった結婚式を!
サンフランシスコで結婚し、それを根拠に日本の戸籍を変遷して、両国で夫婦になる方法をまとめました。なかなか無いレアな体験で、いままで3年間、色々な人に口頭で説明してきたことを、やっとブログにまとめることができました。
このあたりの情報は日本語ではあまりまとまっている場所がなく、3年前、私も慣れない英語で情報収集に苦労した思い出があります。
今回のエントリーが、これから新しい夫婦を歩み始める方々の参考になれば幸いです。
アメリカと日本で結婚することで、色々な手間や手続きが発生するのは事実です。
しかしながら、それを乗り越えることや、新しい体験を楽しめる夫婦でいることができれば、私はとても幸せだなと思います。
みなさんの結婚が、幸せに包まれたものでありますように。